節税

税金節約のために知っておくべき11の控除

家計の節約であまり重要視されていない税金ですが、実はきちんと取り組むと大きな家計の節約につながります。そのためにまず知っておいてもらいたいのが「控除」です。

控除とは納める税金を算出するための金額(収入)から差し引ける支出のこと。つまり控除をすれば所得税や住民税が安くなる・・・というわけ。

実はこの控除、会社員でも申請すれば受けられます。控除を受けるには条件があるものもありますがこれから紹介する11の控除はサラリーマンやOLでも利用できるものなので、利用できそうなものがあればぜひ控除として活用してください。

誰でも活用できる控除

冒頭でも言いましたが控除を受けるにはいくつか条件が必要なものが多くあります。しかし無条件で受けられる控除もあります。それが「基礎控除」というものです。

基礎控除とは納税者であれば誰もが受けられる控除のことで控除額は一律で38万円。つまり収入のうち38万円分は税金の計算から除外される・・・ということ。

ちなみに年収が38万円未満でも基礎控除は受けられます。つまり年収が38万円であれば納める税金はゼロなのです。

また、控除を受ける時は確定申告が必要ですがサラリーマンの場合は年末調整によって会社がまとめて申告してくれるため基礎控除のみであれば確定申告は必要ありません。

ただし収入源が給料の場合は基礎控除以外にも「所得控除」が受けられます。所得控除日手は下記ページで紹介しているのでそちらを参考にしてください。

結婚したら利用できる控除

控除の中には結婚したら受けられる控除があります。中でも重要なのが

  • 配偶者控除
  • 配偶者特別控除
  • 扶養控除

の3つです。

配偶者控除

配偶者控除とは結婚して配偶者がいると受けられる控除のこと。例えば結婚してご主人が働きに出て奥さんが専業主婦になると、ご主人は配偶者控除が受けられるようになります。

ただし結婚すれば必ず配偶者控除が受けられるわけではありません。配偶者控除を受けるには次の条件を満たす必要があります。

  • 納税者本人と、生計を同じくする配偶者。
  • 法律上、正式の配偶者であることが必要で、愛人や内縁関係の人は対象外。
  • 年間の合計所得金額が38万円以下。
  • 青色申告者の事業専従者で、給与を受け取っていないこと。または、白色申告者の事業専従者でないこと。

ザックリ言ってしまえば奥さんが“専業主婦”になったら配偶者控除が適用される・・・ということ。またご主人が会社を経営しており、奥さんが会社で働いているものの奥さんに給料を支払っていない場合でも配偶者控除は適用されます。

配偶者特別控除

配偶者特別控除とは配偶者に収入があっても受けられる控除のこと。配偶者控除では『年間の合計所得が38万円以下』という条件がありましたが、配偶者特別控除の場合は配偶者の所得上限がさらに上がります。

具体的には

  • 控除を受ける人の年収が1000万円以下
  • 配偶者の年間所得が38万円を超えており123万円以下

の両方を見たいしている必要があります。よく主婦でパートに出ている人が給料をもらいすぎないようにシフト調整していたりしますが、これも配偶者特別控除を意識しているからです。

ちなみに配偶者特別控除は配偶者の年間所得によって変わります。詳細は下記表をご覧ください。

引用:国税庁

扶養控除

扶養とは人に生活費の面倒を見てもらっている状態の人のことを言い、一般的には自分の子供や定年を迎えた親などを指します。納税者本人にこうした扶養家族がいる場合に適用されるのが扶養控除です。

とはいえ、ただ生活費の面倒を見ているだけでは扶養家族とはみなされません。次の4つに該当している人がいることで初めて扶養家族がいると認められます。

  • 納税者本人と、生計を同じくしている人。
  • 納税者の親族(配偶者を除く)、あるいは老人福祉法で養護を委託された老人や、児童福祉法で養護を委託された児童(いわゆる里子)。
  • 65歳未満で年間の収入が108万円以下、もしくは65歳以上で年間の収入が158万円以下。
  • 青色申告者の事業専従者で、給与を受け取っていないこと。あるいは、白色申告者の事業専従者でないこと。

例えばお子さんが大学生でアルバイトなどをしている場合、そのアルバイト代が年間で108万円以上稼いでしまうと扶養家族から外れてしまい、扶養控除を受けることができません。ですので、もしお子さんがアルバイトをしているのであれば108万円を超えないよう注意とアドバイスをした方がいいでしょう。

家族にトラブルがあった時に利用できる控除

自身や家族に何らかのトラブルにあった時に受けられる控除もあります。例えばケガや病気や事故などによって病院で治療したり亡くなったりした場合に控除が適用されます。

特に知っておいてもらいたい控除としては

  • 医療費控除
  • 障害者控除
  • 寡婦(寡夫)控除
  • 勤労学生控除

の4つがあります。

医療費控除

医療費控除とは病院などで治療や診察をしてもらった際に一定の医療費を支払った場合に適用される所得控除です。医療費控除を受けることができるのは次の2つに該当する医療費を指します。

納税者が、自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費であること。
その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費であること。

控除金額は以下の計算式によって算出されます。

医療費-加入している生命保険から受け取った保険金-※10万円
※ただし総所得金額が200万未満の場合はその5%

例えば、総所得が350万円の人が、ケガで入院して支払った医療費として60万円支払い、加入している生命保険会社から療養費として25万円受け取った場合、この人がこの年医療費控除として受けられる金額は

60万円‐25万円‐10万円=25万円

となります。ちなみに、“加入している生命保険から受け取った保険金”は出産一時期金や療養費や家族療養費などを受け取った保険金も含まれます。

障害者控除

障害者控除とは納税者自身もしくは控除対象配偶者や扶養家族が、所得税法上の障害者に当てはまる場合に適用される所得控除です。障害者には“一般障害者”と“特別障害者”の2種類があり、一般障害者は27万円、特別障害者は40万円の控除があります。

一般障害者と特別障害者の違いは以下の通りです。

一般障害者とは
  • 精神保健福祉センター、児童相談所などの公的機関や、
  • 精神保健指定医によって知的な障害があると判定された人。
  • 法律によって、身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳、あるいは、戦傷病者手帳が交付されている人。
  • 満65才以上で、身体あるいは、精神に障害のある人が福祉事務所や市町村長から、障害者であると認定されている人。
特別障害者とは
  • 一般障害者の中で、特に重度の障害があると認められた人。
  • 精神の障害が常にあり、物事を正しく判断できない状態にある人。
  • 身体の障害で6カ月以上寝たきりの状態で、常に介護が必要とする人。
  • 原爆の被爆者で、国から認定されている人

寡夫(寡婦)控除

寡夫(寡婦)控除とはご主人や奥さんを亡くしたり離婚して単身で生活しているに適用する所得控除です。ちなみに寡夫は男性のことで寡婦は女性を指します。

この控除が適用される条件として次の2つがあります。

  • 扶養家族もしくは生計を同じにしている人の年間総所得が38万円以下
  • 夫(もしくは妻)が死別もしくは離婚して単身で生活し、なおかつ年間合計所得金額が500万円以下

控除金額は27万円ですが、特定の寡婦に該当する場合は35万円となります。特定の寡婦とは次の3つに該当する人を言います。

  • 夫と死別し又は離婚した後婚姻をしていない人や夫の生死が明らかでない一定の人
  • 扶養親族である子がいる人
  • 合計所得金額が500万円以下であること。

勤労学生控除

勤労学生控除とは納税者本人が働きながら学んでいる学生であり、その所得が一定以下の場合に適用される所得控除です。勤労学生控除を受けられる条件は次の3つです。

  • 通う学校が中学、高校、大学、高等専門学校の学生か、専修学校、各種学校のうち、一定の条件の学校の学生であること。
  • 学生本人の労働による所得であること。
  • 学生本人の給与所得の合計は65万円以下、なおかつ給与以外の所得が10万円以下

ちなみに、サラリーマンとして給料を受け取っている人が勤労学生控除を受ける場合、勤務先に「給与所得者の扶養控除(異動)申告書」を提出することで控除の申請を行うことができます。詳しくは現在勤めている経理担当の方に相談してみてください。

保険に加入すると利用できる控除

もしもの場合に備えて保険に加入している人も少なくありません。実は保険に加入していると保険の種類や金額に応じて税金が控除されます。

とはいえ「保険」の名の付くものであればなんでも控除されるわけではありません。また加入している保険によって控除の条件や控除額が変わります。

特に次の3つの保険控除は利用できる人が多いので、きちんと控除を受けましょう。

社会保険料控除

社会保険料控除とは納税者本人もしくは納税者と生計を共にする配偶者やその他親族が本来支払うべき保険料を代わりに払った場合に適用される所得控除です。控除金額はその年に実際に支払った保険料だったり、給料や公的年金から差し引かれた保険料の全額となります。

ちなみに社会保険料控除として認められる支払いは次の9つです。

  • 国民健康保険の保険料
  • 介護保険料
  • 国民年金、厚生年金、船員保険の保険料
  • 国民年金基金の掛金
  • 厚生年金基金の掛金
  • 健康保険、雇用保険の保険料
  • 共済組合の掛金
  • 農業者年金の掛金
  • その他、国によって公的なものと認められた保険料や掛金

ちなみに自営業者などは保険料を支払ったことを証明する書類を確定申告時に添付する必要があります。この証明書がないと控除が受けられないので保険会社から送られてくる証明書は必ず保管しておきましょう。

一方会社員の場合は給料から天引きされているケースが多いため、会社側が代わって申告してくれます。とはいえ年末調整の際に証明書が必要になりますので、自営業者と同様に保険料の納付証明書は捨てないようにしてください。

生命保険料控除

生命保険料控除とは、納税者が一定の生命保険料や介護医療保険料や個人年金保険料を支払った場合に適用される所得控除です。なおこの生命保険料控除は平成22年の税制改定によって改正され、適用限度額が10万円から12万円に変更されています。

ただし、保健期間が5年未満で、貯蓄性が高いものについては対象外となることがあるので注意が必要です。また支払った生命保険料や年金保険料からは、その年の配当金や割戻金は差し引かれてしまうため、『生命保険に加入=生命保険料控除が受けれる』というわけでもありません。

地震保険料控除

地震保険料控除とは、納税者が特定の損害保険等に係る自身等損害部分の保険料を支払った場合に適用される所得控除です。この控除は平成19年に地震災害による損失への備えに係る国民の自助努力を支援するために創立された比較的新しい所得控除です。

控除の対処となる保険や共済の契約は、納税者本人もしくは一緒の生計の中で生活する配偶者やその他親族が所有している家屋が対象です。そして地震・噴火・津波やそれらが原因となる火災や損壊等の填補する保険金や共済金が支払われる契約であることが条件です。

控除金額はその年に支払った保険料の金額によって異なります。具体的な控除金額は以下の表のとおりです。

控除するには「確定申告」が必要

これまで紹介してきた11の控除はすべて“申告”して初めて受けられます。つまり申告しなければ控除は受けられませんので、必ず申告するようにしましょう。

控除を申告する方法は年度末に「確定申告」をすることです。サラリーマンの場合、一部の控除は会社が代わって行ってくれるため年末調整で十分だったりします。しかし中には確定申告が必要な控除もあります。

下記ページでサラリーマンでも確定申告が必要なケースをまとめていますのでぜひ参考にしてください。

また、確定申告を受けるべきかどうか?が分からない時は税理士に相談するのもアリだと思います。

税理士に相談すれば有料ではありますが確定申告を代行してくれますし、節税のアドバイスもしてくれます。確定申告のやり方自体は決して難しいものではないですが、間違えると余計な税金を納めないといけない可能性もでてくるため、不安であれば一度相談してみてもいいでしょう。

まとめ

ここで紹介した11の控除はどれも誰もが受けられるものです。控除を受けることで納める税金が減らせるため、実質的な支出が抑えられます。

税金は国民の義務のため支払うべきものではあるものの減らせるならそれに越したことはありません。控除を活用すれば税金に持っていかれるお金も減って家計の負担軽減になりますので積極的に有効活用してください。