生活費節約アドバイス

医療費の自己負担額を減らすための5つの工夫

支出の中には毎月必ず使うべきものもあれば、突発的に必要になるものもあります。例えば食費や光熱費や家賃などといった生活費全般は前者ですし、遊びに行ったり冠婚葬祭関連の支出は後者にあたります。

そして“突発的な支出”としてもっとも大きいのはおそらく医療費のはず。医療費とは病気やケガをした際に病院に行って診察してもらったり治療してもらう際に支払うお金のこと。

ただ、かかった医療費を全額支払う必要はありません。なぜなら健康保険に加入していれば医療費総額の3割を自己負担するだけで済むからです。

とはいえ、3割でも自分の財布からお金を支払うことには変わりありません。ではこの医療費の自己負担額をもっと抑える方法はないのか?

実は病院の通い方やもらう薬の選び方を変えるだけで、自己負担額を節約することができます。さすがにゼロにすることはできませんが、必要以上にお金を支払う必要はなくなるのです。

そこでここでは、医療費の自己負担額を抑えて家計への負担を軽減するための5つのテクニックを紹介します。これを知っておくだけで医療費の支払い額を減らしたり、一度支払ったお金が返ってきたりするので、知識として知っておいてください。

 

医療費の自己負担額の割合について

医療費 負担2一般的に医療費の自己負担額というのは総額の3割と言われています。ただそのためには診察を受ける前に必ず健康保険証を提示する必要があります。

例えば、病気になって診察を受けてもらい、さらに詳しい検査をしたりしたため、医療費の総額が1万円だったとしましょう。その際に事前に健康保険証を提示していれば、窓口で支払う金額は3000円で済むのです。

また一部の年齢の人にたいして3割位下の自己負担で診察を受けることができます。例えば3歳未満の子供の場合の自己負担額は2割ですし、70歳以上の高齢者は1割で済みます。

ただし、健康保険が適用しない・・・つまり自己負担額が軽減しないものもあります。以下のケースは健康保険の適用外となりますので注意が必要です。

健康保険が使えないケース

・美容を目的とする整形手術
・近視の手術など
・研究中の先進医療
・予防注射
・健康診断、人間ドック
・正常な妊娠・出産
・経済的理由による人工妊娠中絶

例外的に健康保険が使えるケース

・斜視等で労務に支障をきたす場合、生まれつきの口唇裂の手術、ケガの処置のための整形手術、他人に著しい不快感を与えるワキガの手術など
・大学病院などで厚生労働大臣の定める診療を受ける場合
・妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)などによる異常分娩の場合
・母体に危険が迫った場合に母体を保護するための人工妊娠中絶

引用:全国健康保険協会

こうした例外的な治療を除いては、健康保険を使うことによって医療費の自己負担額を減らすことができます。つまり病院に行く時に必ず健康保険証を持参することが、医療費を抑えるもっとも基本的な方法と言っていいでしょう。

 

医療費負担を減らす5つの工夫

医療費 負担3病院などに行って治療や診察をしてもらう際、健康保険証を提示することで実質の負担額を減らすことができます。とはいえ、医療費そのものが高額なため、3割の自己負担額でもそれなりの支出になることも珍しくありません。

医療費を好きで支払っている人は1人もいません。しかし、今後の生活に支障をきたさないための必要経費であることは間違いありません。

ただ、ちょっとした工夫をすることによって治療や診察にかかる支出を節約することができます。特に次の5つは、財布から支払うお金を抑えることにつながりますので、病院に行って診察を受ける時に意識してみてはいかがでしょう。

1:初診は身近な診療所やクリニックに行く

一言に診察を受ける場所といってもいろいろあります。どんな病気でも治せる設備が整っている大病院から、患者を入院させるだけのベッドすらない小さなクリニックまでさまざまです。

まずケガをしたり病気になってしまった時にどこに駆け込むのがベストなのか?多くの人は大きな病院に行きがちですが、実は近所にあるクリニックや診療所に行った方が「医療費節約」という点では正解なのです。

大きな病院方が設備はそろっているしどんな病気やケガにも対応してくれる・・・と思うかもしれませんが、実は小さな医療費期間に最初に駆け込むと色々とメリットが発生するのです。

そのメリットは大きく分けると

・待ち時間が短い
・初診に特別料金を取られない
・はしご受診を防ぐ

の3つがあります。

・待ち時間が短い

病院が大きければ大きいほど抱えている患者も多くなります。つまりそれだけの患者さんを診察しなければいけないわけで、必然的に待ち時間が長くなります。

特にベッド数が200を超える大きな病院だと待ち時間が3時間で診察3分・・・なんてことも珍しくありません。つまり病気やケガなどで苦しむ時間が必然的に長くなるわけです。

それに対して小さなクリニックなどは患者さんの数が病院に比べて比較的少ないです。ですから3時間も待たずともすぐに診察を受けることができる。

もちろん設備そのものは病院に比べると見劣りしますが、どんな病気なのか?どんな治療をすればケガが治るのか?くらいは分かります。まずは現状どういった状態なのかを正確に知る意味では、遠くにある大病院よりも近所にあるクリニックの方が早く知ることができるでしょう。

・初診に特別料金を取られない

あまり知られていませんが、大きな病院で初診を受けると「特別料金」というものが発生します。これは保険対象の料金のため、ダイレクトに患者さんに請求されます。

さらにこの特別料金の価格は各病院で自由に決めることができます。現在この特別料金を実施している病院は2013年時点で1174か所あり、金額も105円から8400円と書く病院によって異なります。

そもそもなぜこのような特別料金の設定が認められているのか?その理由について読売新聞のコラムで次のように説明されています。

 特別料金の制度は、患者が大病院に集中することを避け、病院と診療所の役割分担を進める狙いで、1996年度に導入された。
日本では、保険証があればどの医療機関でも自由にかかることができる。便利な一方、患者の中には、軽い病気でも安心感を求めて大きな病院にかかる人が多い。この結果、病院勤務医が軽症の外来診療に追われて疲弊し、本来の専門治療に専念できないのが現状で、医師不足の一因とも指摘される。国の調査では、病院勤務医の4割が外来診療を負担に感じ、8割が「軽症なら近隣の診療所を受診してほしい」と答えている。
そこで、紹介状のない人に特別料金を課すことで、まず診療所を受診するよう誘導を図った。

引用:2013年5月28日 読売新聞

しかし、クリニックや診療所などの医療機関からの紹介があると、この特別料金は発生しなくなります。金銭的な点から考えると、何かあるとすぐ大病院に駆け込むのは決して得策ではないということです。

・はしご受診を防ぐ

はしご受診とは、病気やケガの種類によって診察してもらう病院をコロコロ変えることを言います。特に病気やケガに対する知識が中途半端にある人がやりがちなことで

「この病気だったらこの病院がいい」
「このケガだったらあそこの病院に行ったほうが良い」

・・・と言って、色々な病院を転々としています。

確かに病院によって得意・不得意があると思います。しかし通う病院を増やせば増やすほど、それだけ初診料の支払い回数が多くなるため、自然と医療費がかさんでいきます。

さらに、各病院で出された薬も重複する可能性があります。そうなれば重複した分薬代は無駄ということになってしまう。

しかし、近所にかかりつけの医療機関があれば、まずはそこに行って診察してもらい、正しい指示を仰ぐことができます。また他の医療機関を紹介してもらうにも、お医者さん目線から勧められるところを紹介してくれるのでまず失敗はありません。

このように、近所にかかりつけの医院を作っておくことで、余計な医療費負担を増やすことなく、的確な治療や診察を受けることができます。

2:受診料が高い時間帯に行かない

医療機関は基本的に朝の9時から夜の7時くらいまでが診察時間で、日曜祝日は行っていません。しかしもしもの時のために休日診療や時間外診療をしている病院もあります。

そのため、医療機関に診察を受けることは基本的に24時間365日可能です。しかしよっぽどのことがない限り、時間外診療を受けることはお勧めしません。

なぜなら、時間外診療は通常の外来診療よりも医療費が高めに設定されています。となれば当然自己負担額も増える・・・ということ。

こうした通常の外来診療以外で受ける場合、初診料と再診料はそれぞれ以下の金額がかかります。

 診療時間  初診料  再診料
 早朝や夜などの時間外  850円  650円
 深夜(22時~翌6時)  4800円  4200円
 休日  2500円  1900円

もちろん、どうしても診療を受けたい場合は病気やケガの度合いによっては自己負担額の節約などと言っていられませんから迷わず行った方がいい時もあります。しかし、ちょっとした体調不良などで診療受ける場合は、なるべくこうした時間外を避けて通常の外来に行った方がおトクです。

医者に診てもらいたいと思ったらなるべく平日に時間を作って医療機関に行くようにしましょう。

3:ジェネリック医薬品を活用する

持病によっては毎日薬を飲み続けないといけないものもあります。しかし毎日薬を飲むということは、それだけ薬代がかかってしまうことになる。

そんな薬代を抑える画期的な方法が最近少しずつ浸透してきました。それが“ジェネリック医薬品”というものです。

ジェネリック医薬品とは、同じ成分や効果を持ちながら従来の薬より価格が安いものを指します。同じ成分なのになぜ価格だけ安いのか・・・その理由は「特許」が切れているからです。

一般的に新薬が開発されると特許が申請され、他の製薬会社が同じ薬を使おうとすると特許使用料が発生します。そうなるとコストがかかるため、それが販売価格に反映されます。

しかしジェネリック医薬品は特許が切れているため特許使用料が発生しません。それによって生産コストを下げることができるため、従来に比べて安価に販売することができるのです。

薬の種類にもよりますが、従来よりも2~7割くらいの価格でジェネリック医薬品は販売されています。しかも有効成分はほぼ同じですからこちらに替えたことによる副作用等のリスクはほとんどありません。

もし普段から薬を飲む生活を強いられている人は、飲む薬をジェネリック医薬品に替えるだけ医療費の負担を減らすことができます。特に高血圧や糖尿病の人は薬局で勧められるはずですからそちらに替えてみるといいでしょう。

4:確定申告で医療費控除を受ける

これまで挙げた方法をとれば、医療費の負担を減らすことができます。しかし病気やケガの具合によってはどうしても医療費がかさむこともあるはず。

しかし、ある程度医療費の負担が多くなった場合、支払った医療費を返してもらうことができます。それが「医療費控除」と呼ばれるものです。

控除については【税金の節約に欠かせない11の『控除』について】で説明していますが、これは医療費にも適用されます。やり方としては毎年2月から3月に行われる確定申告を申請するだけ。

もちろんこの医療費は職業に関わらず受けることができます。あまり確定申告とは縁のないサラリーマンの人でも、大きな病気やケガをして医療費が多くかかったのであれば、確定申告をして医療費の一部を還付してもらいましょう。

しかし年間で数千円や1万円程度でしたら申請してもあまり意味がありません。年間で医療費負担が10万円を超えることが医療費を還付してもらう条件の1つです。

また、この10万円は1人ではなくあくまでも『一家庭』というくくりになります。例えば自分以外の家族(親や子供や配偶者など)全員でかかった医療費の負担総額が10万円を超えれば還付されます。

とはいっても負担総額が100%返ってくるわけではありません。あくまでも課税対象外となるだけですから間違いのないように。また確定申告をする際、医療機関でもらう領収書が必要になりますので、必ず取っておくようにしましょう。

5:高額療養費制度を活用する

病気やケガの度合いによっては手術をしたりしばらくの間入院を余儀なくされる場合があります。そうなると当然医療費だってかさみますし、自己負担額を高額になるはず。

こうした自己負担額が高額になった場合に、その負担額の一部を取り戻すことができます。それが高額療養費制度です。

高額療養費制度とは、1ヶ月の間にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、自己負担限度額を超えた金額が後日払い戻される制度のことです。例えば月の月収が26万円以下の人の場合、医療費の自己負担額が57,600円を上回った場合、その差額が返還されるというもの。

医療費 負担

ただし、この制度はあくまでも「取り戻す」ものであり、事前に負担額を減らすものではありません。先ほど挙げた月収26万円の人が10万円病院に支払わないといけない場合、まず先に10万円支払い、その後高額療養費制度を使って差額の42,400円を払い戻してもらう・・・と言う形です。

また、同年に3回以上この制度を利用すると、4回名以降はさらに自己負担限度額が引き下げられます。また、事前に高額な医療費がかかることが分かっている場合は「限度額適用認定証」を取得することで、自己負担限度額のみの支払いで済ませることができます。

特に大きなケガや病気をした際にはこの制度を活用して少しでも負担額を減らしておくようにしましょう。

 

医療費の負担を減らす最大の方法は“健康”

ここで紹介したように、医療費の自己負担額を減らすための方法は色々あります。また国や自治体の制度を活用すれば、支払った負担額を取り返すことだってできる。

しかし、こうした医療費の負担をゼロにする唯一の方法があります。それが体調管理に気を付けて健康的な生活を送ること。

そもそも病気やケガをしなければ病院に行く必要がないですし、当然医療費を払う必要もありません。もちろんどれだけ万全に準備していても病気やケガはするものですが、普段の生活から心掛けることでそのリスクを最小限にとどめることはできます。

つまり、医療費の自己負担額を減らす最大の秘訣は“健康でいること”。当たり前と思うかもしれませんが、これだけで医療費に支出を割く必要がなくなります。

適度に運動し、バランスの取れた食事をする・・・これこそが、医療費を節約するもっとも効果的な方法ですので、普段の生活から気を付けて過ごしてください。